こんなにある、日本で起きた食品偽装事件

不二家

製菓会社として『不二家』の名を知らない人はほとんどいないだろう。洋菓子チェーン店の大手として長年先端を歩いていき、マスコットキャラクターである『ペコちゃん』をモチーフにした『ミルキー』、またはアメリカの母の味をイメージした『カントリーマアム』などのお菓子なども、皆一度は口にしているに違いない。

食品の品質を本来なら守らなければならない会社が食品の品質が明らかに劣化しているにも関わらず、そのまま使用として流通に流し、結果として消費者に体調を引き起こすような事件も近年多発するようになっていた。

本来なら安全を保証されているはずの食品偽装事件、不二家もまたそうした不正を発覚した後、企業として最大の危機を迎えることになる。

事の発端は2006年10月と11月、2か月合わせて計8回にわたって、埼玉県新座市の不二家埼玉工場にてシュークリームを製造する際に、賞味期限が切れた牛乳を使用していることが同年11月までに社外プロジェクトチームの調査によって判明する。この賞味期限というものは実際の商品の使用期限ではなく、社内で独自に設定された期限のことである。11月13日に管理職など約30人に向けてこの件に関する報告書を配布していた。この報告書内で『マスコミに知られたら雪印の二の舞になることは避けられない』という表現があったが、これは不二家に委託された外部のコンサルト会社が危機意識を喚起する意図で使った表現であるとされているが、誤解を生む表現には変わらない。結局このことは、洋菓子需要の繁忙期であるクリスマス商戦を乗り切った後の2007年1月10日に、内部告発を受けた報道機関の手によって事態が公のものとなる。翌日になって同社は、洋菓子の製造販売を一時休止する措置を取ったが、以降もずさんな食品衛生管理の事例が明らかになり、企業倫理に欠ける安全を軽視した姿勢や隠蔽に対して、消費者から1000件を超える苦情が不二家に殺到するなどの世間からの批判を受ける。

後に不二家が設置した信頼回復対策会議の報告によると、2006年当時の報告書には不自然な点が多く、社外プロジェクトチームに対する不信感が募っていたため、報告書を公表しなかったとしている。

雪印集団食中毒事件

記事の中で少し触れた雪印の二の舞という表現だが、これは2000年に起きた『雪印集団食中毒事件』の事を指している。その年の6月25日、雪印乳業大阪工場で製造された『雪印低脂肪乳』を飲んだ子供が嘔吐や下痢などの症状を出すなどの問題が発生した。ふちが語には同市内の病院で食中毒であるとの疑いから通報され、さらに3日後には保健所から大阪工場に製品回収を指導する。

この頃には各地から食中毒の通報が入ってきていたが、大阪工場は言を左右にして応じようとしなかった。6月29日事件のプレス発表と約30万個の製品回収が行われたが、既に対応が遅れ、プレス発表後は被害の申告者が爆発的に増えも長か譜だけでなく、兵庫県・和歌山県などの広範囲に渡って14780人の被害者が発生するという前代未聞の食中毒事件に発展し、世間を震撼させた。

症状は嘔吐や下痢、腹痛など比較的軽いものだが、中には入院に至るような重傷者も出たことで、戦後最大の食中毒事件として見られることになる。

このような事件が起きたにも関わらず、のん気に報告書内でマスコミに知られないように注意をしろ、などと誤解を生むような報告を上げた時点で意図的に不正事実隠蔽しようとしていたと取られても仕方のないことだろう。

事実、事態が判明するまでに一ヶ月近い期間後に問題が世間に報道されたことにより、企業としての倫理を疑われてしまうのも無理はない。

そしてこの後、大手としてトップに君臨してた不二家の失墜劇が幕を開けることになった。

事件判明後

2007年1月10日に社内規定で定められていた消費期限切れの牛乳を使用してシュークリームを製造していることが世間に露呈し、翌日に社長ら取締役会が問題についての釈明会見を開く。その席上で、消費期限切れの鶏卵を用いたシュークリーム、消費期限切れのリンゴの加工品を用いたアップルパイ、厚生労働省の定めたガイドラインである洋生菓子の衛生規範に定められた値の10倍・社内規定の100倍を越す細菌が検出されたシューロール、社内基準を超過した賞味期限表示を行ったプリンなどの品質基準未達成製品を出荷していたこと、埼玉工場でつきに数十匹のネズミが捕獲されていたことを公表する。

3日後、2006年11月に関東地方で同社の洋菓子を食べた消費者から腹痛や嘔吐などの健康被害を訴える苦情が釈明会見以降、数件寄せられていたことが判明し、これを公表する。さらに2日後には、泉佐野工場製の『ペコちゃんのほっぺ』で、1995年6月にブドウ球菌による食中毒が発生していた事実を公表していなかったことがあきらかになる。

ただこの事件は患者が20人未満であったため、報告を受けた保健所が公表しなかったことが大きな理由となっている。

その後、厚生労働省と農林水産省は社長の出頭を求め、衛生管理体制の徹底を指導し、埼玉県による埼玉工場の二度の立ち入り検査の結果、『ない』とされていた14種類の『原料消費・賞味期限チェック表』記録簿が発見される。埼玉県は食品衛生法第28条に基づき、同工場から出荷された全製品についての製造記録の報告を1月23日までに提出するように要請を出す。

検査立ち入りから翌日、プリンなどの消費起源を社内基準より長く表示していた問題で、同社が農水省の聞き取り調査に対し『元々安全に食べられる期間より短く設定しており、1日長くしても問題ないと現場が判断したのではないか』と説明していたことが判明し、不二家は商品テストなどで設定した『安全に食べられる期間』の80%を、消費期限に設定していることも明らかになる。

問題は続出し、その後製造したチョコレート製品に、蛾の幼虫が混入していたこと、そして問題の商品の製品回収を実施していなかった事実も判明する。

芋ずる式で問題が出てくる中でさらに、泉佐野工場における衛生基準を国の定める規範より緩くしていた事実も判明し、もはや不正の事実は雪崩れとなってさらに湧き出してくる。

埼玉工場におけるプリンの消費期限延長問題で埼玉県は食品衛生法違反の疑いがあると指摘するなどもはや止まることはない。翌日、農林水産省は『工場内の移動は異邦ではない』との見方にたいして『消費期限延長は可食期間内に収まっている』と厳重注意にとどめる。

これで終わるはずもなく、泉佐野工場が大阪府の保健所から食品衛生法に基づく業務改善命令を受け、消費者からの異物混入などに関する苦情・問合せが、2005年12月から2006年11月の1年間で1693件に達していたことを発表する。

その後、小売向け一般菓子を製造している3工場が取得している品質管理の国際規格『ISO 9001:2000』について、検査機関SGSJapanの再審査の結果、基準を満たしていない事実が判明する。

世間一般ではまだ食べられる期間内ということでも、社内で、商品として発売する以上、自宅で食べるものとは訳が違うため品質管理が徹底して維持しなければならない。

筆者も飲食店で働いていた経験を持っているが、規定の期間が過ぎた製品は全てその日の閉店後に破棄するという厳しい決まりがあった。それだけ食品を取扱うことの重要性を意識しなければならないということだ。

不二家の工場の波乱もだが、それは不二家の販売店にまで波及することになる。

事件の影響

1月11日より、洋菓子の製造・販売を事件発覚後から翌日に休止することになる。また、ウェブサイトは一部商品情報を除いて、全ての謝罪文のページに自動転送されるように設定され、この措置により株主向け開示資料を含む企業情報が一時閲覧不能となる。翌日になると、東急ストア・クイーンズ伊勢丹などのスーパーマーケットが、洋菓子工場で製造されたものも含め、全ての同社製品について、全店舗の売り場から撤去を始める。

さらにその3日後にはセブン&アイホールディングス、イオンの各グループのスーパーマーケット・コンビニエンスストアや、ローソンなどでも製品の撤去が決められた。

翌日、事件発覚後も営業を続けていた東京神楽坂の『ペコちゃん焼き』の販売の休止も決定する。

さらには粉飾決算の疑惑も浮上するなど、会社自体にまで事件の影響をもたらすことになり、その3日後に一連の不祥事の責任を取る形で、当時社長の藤井林太郎氏が退任、臨時取締役会が開かれ、当社初の創業家以外の社長となる桜井康文取締役を社長に昇格させる人事を決定し、同日就任を果たす。

1月26日に、藤井林太郎が子会社であるビー・アールサーティワンアイスクリーム株式会社の社外取締役を辞任する。

さらに、飲料類については安全性は独自に確認したとしてソフトドリンクを取扱っていたサッポロ飲料も、2月以降の販売休止を発表した。

その後、不二家は翌年5月11日から、製品の安全確保への取り組みを強調した内容で、テレビCMの放映を再開すると発表する。

TBS不二家捏造報道問題

事件は世間に広く公表され、当時のテレビ番組のほとんどが目玉事件として日夜報道を続けていた。しかしその中で事件の内容をいくらかテレビ局が捏造していると、不二家から反論される事態が発生する。

問題となったのはTBS、2007年1月22日に放送の『みのもんたの朝ズバッ!』の一部内容についてである。

不正の情報提供者として不二家平塚工場の元従業員とされる女性の顔は移さず音声を変えた証言映像と、ナレーションと字幕説明がはいたVTRが流される。

ナレーター:「彼女によれば、賞味期限の切れたのチョコレートの包装をし直したり、溶かし直して再使用していたというのです」

情報提供者:「はじめは全部賞味期限だからごみ箱に入れていたら怒られて…」「パッケージに製造日と賞味期限が書いてあるので、それをもう一度パッケージし直すために裸にしてほしいと言われて…」

ナレーター:「平塚工場では、日常的に、捨てなくてはならない商品の包装を付け替え、再使用していたと言います」「さらに驚くべきことに…」

情報提供者:「もう一回それを溶かしてまたいちから製造し直すってことなんですけど…」「賞味期限が切れて店舗から売れ残った商品を引き受けてそれを溶かしてまた製造し直す」

ナレータ:「この二点(再包装、溶かし直し)について 不二家本社は確認がとれていないとしています」「情報提供者と同時期に働いていた別の人物も同様の証言をしており疑惑は深まるばかりです」

これに続く形で司会をつとめるみのもんた氏が『元パートの職員、それも複数人が証言しました』と、溶かしたチョコレートに牛乳を流し込むイラストのフリップを示しながら『賞味期限の切れたチョコレートと牛乳を混ぜ合わせて新しい製品として再出荷している』などと説明し『帳簿を見直さないといけない』・『上場企業の会社ですから、上場責任は大変だと思います』と言ったコメントを出した。

不二家広報は、当日放送された内容についてその日のうちにTBSに抗議し、翌日には文書で、賞味期限のチョコレートが『平塚工場に戻ってくることはなく』、『再処理して商品化することはない』、チョコレート製造には『牛乳を加える工程はない』ことなどを番組宛に伝え、調査と放送内容の訂正を申し入れる。

しかし、それに対してTBS側は非を認めようとせず、あまつさえその後もみのもんた氏は問題の放送後の翌日、同番組において、不二家の新社長就任のニュースを伝えた中で『古くなったチョコレートを集めてきて、それを溶かして、新しい製品を平気で作りかえる会社は、もうはっきり行って廃業してもらいたい』と発言し、さらに31日の番組においても『異物じゃなくて汚物だね、こうなると』などと告発内容が確定的事実である、との前提に立った断定的発言を行ったのだ。

報道の矛盾点

このTBSが報道した放送内容に関して、確かな証拠が揃っていると局側は答えているが、そうした中で放送の中からいくつかの矛盾点が浮かび上がっくる。

1:『「牛乳を加えた」と報じた点』
不二家のミルクチョコレートに使用されているのは、番組中のフリップで示したような牛乳ではなく全粉乳であった。平塚工場にも牛乳を混ぜるための設備は存在せず、他の大手メーカーでも通常は全粉乳や脱脂粉乳、生クリームが用いられることがほとんどだった。
2:『流通のルート』
書籍など特殊な流通な制度を持つ商品、または不良品など製造元の責任において回収する必要がない限り、一旦小売店が仕入れた商品を製造元が回収する流通ルートは通常存在せず、不二家でも平塚工場に戻ってくることはないのだ。これは諸事情による返品も、平塚工場ではなく物流倉庫に戻るのが基本である。また、市販のチョコレート製品の賞味期限は半年から1年以上の長期間であるため、賞味期限が切れるまで在庫として抱えていることは、在庫管理が行き届いていないということになってしまう。
3:『コストの点』
不二家のチョコレートは『LOOKチョコレート』を始め、ナッツやフルーツペーストなどが包んである商品が主力であり、単純に溶かして成型し直しただけでは製品になることもなく、遠心分離でナッツやペースト類を除去しようとすると、コストの面で見合わせなくなるし、そのための設備もないのだ。ナッツやペースト類を使用していない『パラソルチョコレート』や『チョコえんぴつ』などは包装が複雑であり、包装を剥がすだけでも多大な人的コストを要する。
4:『製造日印字の点』
チョコレートの包装紙には1995年より賞味期限の印字を行っているが、自称元従業員が証言したような製造日の印字がされていなかったという。
5:「チョコレート」と「クッキー」の混同
元従業員は、TBS担当ディレクターに対し、チョコレートに関する証言と『カントリーまあ無』に関する証言を行い、ディレクターはより詳細であったカントリーマアムに関する証言を採用した。ところが、元従業員は勤めていたとされる平塚工場はチョコレート専業の工場であり、クッキーであるカントリーマアムの製造は行っていないのだ。この点については1月20日のTBSからの事実確認の電話に関する不二家女子社員のメモが残されており、3月30日付の不二家信頼回復対策会議の最終報告書別紙資料にコピーが添付されている。
BPO倫理検証委員会の報告書やTBS検証委員会の報告書によると、この『ディレクターはA通報者を取材した際も、また取材テープを包装用に編集した際も、『カントリーマアム』がクッキーではなく、チョコレートを主体とした貸しであると誤解しており、A通報者の発言は『全てチョコレートに関する発言であると思い込んでいた』とされている。しかし、不二家信頼回復対策会議議長の郷原信郎が記者会見で記者会見した3月25日に不二家本社内でTBSのコンプライアンス室長『朝ズバ!』のプロデューサーに姪、不二家広報部長と信頼回復対策会議議長郷原信郎によって行われた会談の録音の中で、TBS側はコンプライアンス室長も含め三人が口をそろえて『証言者が「チョコレート工場なのに、何でクッキーが戻ってくるのだろうか」と思いながら、カントリーマアムを包装しなおす作業を行っていたと話していたが、その証言をあえて放映せず、チョコレートについての証言のみ放映した』と説明していた。
つまり、この証言が存在するなら取材したディレクターはその時点でカントリーマアムはクッキーだということを把握していたことになり、またそうでないなら、TBSのコンプライアンス室長と二人のプロデューサーは、この階段で『そのような証言が存在したがあえて放送しなかった』と嘘をついたことになる。
この件について郷原は2007年12月27日にTBS社長宛に公開質問状を送ったが、2007年12月4日TBSは『私ども東京放送は、外部委員を交えたTBS拳所委員会から報告書の提出を受け、当社のホームページ上に掲載しており、その内容に関する個別・具体的な質問については、答えを差し控えさせていただきます』と回答を拒否したという。
6:『複数の証言者』
2007年1月22日放送でナレーターとみのもんたがVTRの女性以外にも『複数の証言がある』と語っている点もあやふやなところがある。その後の倫理検証委員会の報告書によれば、もう一人のB通報者は、VTRに出演したA通報者から担当ディレクターの携帯番号を教えてもらって連絡してきた通報者の関係者であり、その後B通報者に対しての面談や撮影取材は断られたという。
放送後一回だけ電話対応があったきり、その後の連絡が取れなくなってしまい、またその際に記したB通報者の電話のやり取りのメモを紛失してしまったという。
B通報者と話した後、再度不二家に電話して事実確認をしたが、その時の不二家側の担当者名を記したメモも紛失したと語っている。
以上のようなことを記した報告書からはB通報者と電話した直後に富士や広報に連絡し、それ以前とは異なるコメントを引き出しているなど、前後の事情から伺う限り、一概には否定できないとしている。